Part6 自動車メーカー編(3)――BOMが調達/生産の“源泉”,組み込みソフト開発は標準化が進む

 自動車メーカーは設計,製造段階の不具合が原因で特定の車が安全上や公害防止上の保安基準に適合しないことが分かったとき,「道路運送車両法」に基づいて,国土交通省に「リコール」として届け出たうえで,無償で車を回収し修理する責任を負っている。読者の皆さんも,新聞やニュースで「○○社がXX年XX月~XX年XX月に製造された車種△△,XX万台のリコールを発表」という報道を目にしたことがあるだろう。

 実際にリコールになっている事例を調べてみると,自動車を構成する2~3万点の部品のうち,1,2点の部品がリコールの原因になっていることが少なくない。現在では車種間の部品共通化が進んでいるため,共通部品に不具合があると,リコール対象の車の台数が莫大な数になることもある。

 リコールが発生したときに,リコール対象の台数や回収・修理にかかる費用を正しく算定するためには,どの部品がどの車に使用されているのかを正確に把握しておく必要がある。そのために,車1台分の部品構成(各部位ではどのような部品をいくつ利用するのか)が登録されたBOMと生産実績(実際にどんな車を何台組み立てたのか)を正確に管理することは,自動車メーカー各社の重要課題の一つとなっている。

BOMを使って,部品構成のバリエーションと変更履歴を管理

 リコールが発生したときのリコール対象の絞り込みについて,もう少し具体的に見てみよう(図1)。

図1●部品不良による不具合対象車両の特定イメージ
図1●部品不良による不具合対象車両の特定イメージ

 自動車の組立工場では,顧客やディーラーが指定した車種,グレード,オプションの1台1台異なる車を,基本的に約束した納期順に生産している(これを「同期生産」や「順序生産」と呼ぶ)。

 こうした生産形態で,問題のある部品を利用した車をリコール対象としてリストアップするには,まず,その部品を利用している車種,グレード,オプションを特定する必要がある。さらに,不具合のある部品が工場に供給されていた時期の特定も必要だ。これは,コスト削減や性能・生産性向上のために行った設計変更に問題があった場合,ある特定の時期(その設計変更が適用されていた時期)に生産された部品だけに不具合が生じるからである。

 問題のある部品を利用している車種/グレード/オプションの特定と,その部品が工場に供給されていた時期の特定のためには,(1)販売仕様による部品構成のバリエーション管理と(2)設計変更の履歴管理が必要になる。自動車メーカー各社は,これらを生産・部品調達指示の“源泉”であるBOMを使って実現している。

「技術部品表(E-BOM)」と「製造部品表(M-BOM)」の2種類がある

 では,自動車メーカーのBOMの中身を,詳しく見ていこう。

 自動車メーカーのBOMには,設計部門が作成/利用する「技術部品表(E-BOM)」と調達,生産管理,製造部門が作成/利用する「製造部品表(M-BOM)」の2種類がある(表1)。

表1●技術部品表(E-BOM)と製造部品表(M-BOM)の主な違い
表1●技術部品表(E-BOM)と製造部品表(M-BOM)の主な違い

 E-BOMは,図面やCADデータと並ぶ開発・設計段階の主要な成果物であり,車1台分の部品構成と,品番,名称,部品色,員数(数量),機能,図面番号,重量などの部品の属性情報が登録される。E-BOMは,設計部門がコストや重量の積み上げを検討する際に利用するが,その最も重要な役割は,調達や生産準備,製造のための「マスター情報」になることである。

 一方のM-BOMは,調達先や製造工程,生産への適用開始日といった調達,製造で必要になる属性情報を,E-BOMに付加したものだ。このM-BOMに基づいて,部品を調達し,車を生産する。

 E-BOMは全社で1つに統合できているが,M-BOMは工場ごとに作成されることが多い。これは,JIT生産(Part4を参照)を行う自動車工場では,部品の調達先が工場の近所にあるサプライヤである場合が多く,工場ごとに生産ラインの形態も異なることがほとんどだからである。

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