「プロジェクト調達マネジメント」の知識エリアより,定額インセンティブフィー契約に関する問題です。
定額インセンティブフィー契約では,目標コスト,目標利益,共有率,上限金額が契約の際に定義されます。今回の問題における定義内容は下記のとおりでした。
項目 | 定義された値 | 説明 |
---|---|---|
目標コスト | $20000 | 基準となるコスト |
目標利益 | $5000 | 実コストが目標コストと一致した際に納入業者が受け取る利益 |
共有率 | 75:25 | 実コストと目標コストにギャップがあった場合に分担する割合。例えばコスト超過があった場合,超過分の75%は購入者,25%は納入業者が負担する |
上限額 | $30000 | 購入者が支払う金額の上限 |
では,今回の問題のケースを検証しましょう。
今回のケースでは,実コストが$28000ですので,目標コストに対し,$8000のコスト超過となります。定額インセンティブフィー契約では,このコ ストの超過分を共有率で分担します。購入者の負担率(共有率)は,75%ですので,超過コスト$8000の75%である$6000が購入者の負担になりま す。つまり,購入者が支払う金額は,
目標コスト+目標利益+購入者負担分 = $20000 + $5000 + $6000 = $31000
となります。
ところが,上限額として,$30000と定義されていますので,購入者は支払う金額の上限である$30000しか支払いません。そのうち,$28000が実コストですので,納入者の利益は,差額の$2000ということになります。よって,正解は3となります。
ところで,今回のケースの場合,あらかじめ共有率として,75:25が設定されていたにもかかわらず,納入者のほうが多く負担する結果と なりました(具体的には,購入者は,超過コストの62.5%,購入者は37.5%を負担しています)。これは,購入者が支払う金額の上限が決められていた からです。
定額インセンティブフィー契約では,実コストがある点を超えると,今回のケースのように,共有率とは関係なく,納入者の負担がどんどん大きくなります。この共有率が機能しなくなる点のことをPTA(Point of Total Assumption)といいます。