本文を読む前に
- 人とチンパンジーは遺伝子レベルでは、わずか1.4%程度しか違いがないそうです。それでは、チンパンジーと人の違いはどんな点でしょうか。
チンパンジーと人の違い
-
身体的な違い: 人は直立二足歩行が可能で、手を自由に使える。これにより、道具の製作や使用が可能になり、社会的・文化的活動が発展した。一方、チンパンジーは四足歩行が基本で、手を使う能力は限定的。
-
脳の発達: 人は脳が大きく発達し、特に前頭葉の発達により抽象的思考、言語、創造性が可能になった。チンパンジーは高度な知能を持つが、人ほど複雑な言語や文化的活動はできない。
-
社会性と文化: 人は高度な社会構造や文化を築き、文字や技術を継承する。一方、チンパンジーの社会は比較的単純で、文化的伝承の範囲も限定的。
-
人の祖先はいつごろ、どのように誕生したのでしょうか。人の祖先の化石はどこで、どんなものが見つかっていますか。知っていることを話してください。
人の祖先の誕生
- 時期: 人の祖先(ホモ属)は約200万年前に誕生したと考えられている。さらにホモ・サピエンス(現代人)は約20万年前に登場した。
- 化石: アフリカが「人類のゆりかご」と呼ばれるように、人類の祖先の化石は主にアフリカで発見されている。たとえば、エチオピアで発見された「ルーシー」はアウストラロピテクス(猿人)の代表的な化石として知られる。また、ホモ・エレクトス(原人)の化石はアジアやヨーロッパでも見つかっている。
本文設問
(1)人類の進化の過程を示すものとして、図1はどこに問題があるのですか。
図1は進化の過程を直線的に示しており、すべての生物が一つの線上で進化してきたように見える。しかし、進化は系統樹(図2)のように分岐を伴う複雑な過程であり、特定の生物が「次に進化して人間になる」といった単純な流れではない。
(2)図2の☆は何を示していますか。
☆はヒトとチンパンジーが共通の祖先から分岐した点を示している。
(3)類人猿の三つの動物のうち、人間に一番近い動物はどれだと言えますか。
チンパンジーが人間に最も近い動物とされている。
(4)チンパンジーは今後、人に進化することがありますか。
チンパンジーが将来人に進化することはない。進化の分岐点で別の方向へ進んだため、チンパンジーは「賢いチンパンジー」になることはあっても、「人」になることはない。
(5)類人猿には兄弟(チンパンジー、ゴリラ、オランウータン)がいますが、人間はどうですか。
人間はホモ・サピエンスという唯一の種しか存在せず、現在では兄弟種がいない。他のホモ属(旧人や原人など)はすでに絶滅している。
(6)筆者は、今後図2の系統樹がどのようになるかもしれないと言っていますか。その根拠は何ですか。
筆者は、現代人の先に新たな分岐点ができる可能性を示唆している。しかし、その分岐が進化の成功を意味するわけではなく、分岐した枝が絶滅する可能性もあると述べている。進化の過程は不確実性を伴うため、必ずしも現代人の子孫が繁栄し続けるとは限らない。
発展(話し合い/作文)
「人間らしさ」について考えてみましょう。下の学名(ラテン語)と過去の著名人の定義を参考に人間の特徴(ほかの動物と違う点、 人間らしさ)を考えてみましょう。
く学名とのその翻訳>
- 猿人:アウストラロピテクス(南の猿)
- 原人:ホモ・エレクトス(直立するヒト)
- 新人:ホモ・サピエンス(知恵を持つヒト)
く著名人の定義>
- 「人間は社会的動物である」
(アリストテレス Aristotle 384—322BC 古代ギリシャの哲学者) - 「人間は考える葦である」
(パスカル Blaise Pascal1 623—162 フランスの数学・物理学者、哲学者) - 「ホモ・ルーデンス(遊ぶヒト/遊戯人)」
(ヨハン・ホイジンガ Johann Huizinga 1872—1945 オランダの歴史家、哲学者) - 「ホモ・ファーベル(物を作るヒト/工作人)」
(ヘンリー・ベルグソン Henri Bergson 1859~1941 フランスの哲学者)
「人間らしさ」について
人間は他の動物と比べて、以下のような特徴があると言えます。
-
知恵と抽象的思考:
学名「ホモ・サピエンス」が示すように、人間は知恵を持つ存在です。たとえば、未来を予測し計画を立てる能力、哲学や科学を通じて抽象的な概念を探求する能力は他の動物には見られない特徴です。 -
社会性:
アリストテレスの「社会的動物」という定義が示す通り、人間は複雑な社会を構築します。法律や宗教、文化を通じて共同体を形成し、協力しながら生きる点で特異的です。 -
創造性:
パスカルの「考える葦」の言葉が象徴するように、人間は感情や思想を表現するために文学や音楽、芸術を創造します。この創造性は、人間が単なる生存を超えた目的を追求する能力を示しています。 -
遊びの重要性:
ヨハン・ホイジンガが述べた「遊ぶヒト」という定義は、人間の文化的発展に遊びが重要な役割を果たしていることを表しています。スポーツやゲーム、趣味などを通じて、知識や技能を楽しく学び、共有することができます。 -
道具の製作:
ヘンリー・ベルグソンの「物を作るヒト」という言葉が示すように、人間は道具を製作し、それを進化させてきました。この能力によって、産業革命や現代のテクノロジー社会を築きました。
人間らしさとは、知恵や創造性、社会性を通じて自分たちの生き方を問い直し、新たな価値を創造する能力だと言えるでしょう。