択捉島訪問―ロシアの無益な挑発

 ロシアのメドベージェフ首相が、北方領土の択捉島を訪問した。領土問題で日本に譲歩する考えはないとし、今後も訪問を続けると発言している。

 隣国同士で係争中の領土がある場合、あくまで対話を通じて平和的な着地点を探る。それが責任ある国家のとるべき態度である。ことさらに実効支配を誇示するような挑発的な動きは、厳に慎むべきだ。

 こうした行為は、両国の対話の努力に水を差すものであり、日本政府が即座に抗議したのは当然である。岸田外相の訪ロやプーチン大統領の年内訪日の見直しもやむをえまい。

 メドベージェフ氏の北方領土訪問は3度目だ。大統領だった2010年、ソ連・ロシアの最高指導者として初めて国後島を訪れた。首相就任後の12年に択捉島訪問を計画したが、悪天候のため再び国後島を訪れた。

 ウクライナ危機をめぐり、米欧は対ロ圧力を増しているのに比べ、日本は対話をつなぐ姿勢をとってきた。だが、そのパイプをロシア側が細めた形だ。

 国際社会で孤立し、強まる制裁下で経済的にも苦しいプーチン政権は、国内批判をかわそうと国民のナショナリズムをあおっている側面もありそうだ。

 だとしても、隣国への思慮を欠く振る舞いは、歴史的な日ロ間の対立の溝を広げるだけで、誰の利益にもならない。

 ただ、ロシアの対外政策は、巧妙に硬軟緩急を絡ませるのが常だ。領土問題で日本を突き放す姿勢と並行して、ロシア国内での開発投資に秋波も送る。

 プーチン氏の真意はどこにあるのか依然見えないし、それが彼らの外交戦術でもあろう。いまの国際情勢の中で、日本との間でどんな関係を描いているのか、慎重に探るほかない。

 安倍首相はきのうの参院予算委員会で、択捉島訪問について「極めて遺憾」としたうえで、プーチン氏との対話を通じて交渉を続ける意向を示した。

 戦後70年たっても、いまだに平和条約が結べないのが、日ロ間の現実である。膨張する中国との向き合い方や、エネルギー問題を含め、北東アジアの安定秩序づくりを探るうえで、日ロの関係を長期的に強化してゆくことは欠かせない。

 対話の環境づくりのためにも安倍政権はロシアに対し、国際社会との協調を強く求めねばならない。領土問題の交渉に当面の成果を急ぐより、国際秩序へのロシアの復帰を促すことが、長い目で見れば日本の北方領土をめぐる立場を強めることにつながるはずだ。

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