リスクマネジメントの考え方を知る3

「流動性」への対処が不可欠

 最近では、オープン化による技術やツールの高度化、顧客ニーズの多様化・複雑化、低コストや短納期への要求の高まり、それに伴う外注比率の増加などによって、プロジェクトの不確実性が増している。そのためプロジェクトの実施フェーズでは、チェックリストに網羅されていない不測のリスクが発生するケースが一般的になってきた。またリスクは独立した事象ではなく、あるリスクが発生すると、それが別のリスクの出現を誘発する場合も多い。加えて、同じリスクでも、プロジェクトのフェーズごとに発生確率やインパクトは異なる。

 このようなリスクの流動性(ダイナミズム)を考慮すると、固定的なチェックリストのみに頼ったリスク・マネジメントでは、間違った安心感を生みやすく、危険である。チェックリストはリスクを独立事象と見なし、使用頻度も低いからである)。また、チェックリストによる対応策は、どうしても“マニュアル的”になりがちだ。

 そこで必要になるのが、リスクの流動性に対応できるリスク・マネジメント手法である。すなわち、「リスクへの対応策を、誰が、いつ、どんなプロセスで継続的に実行するのか」、「その対応策で結果が出なかった場合は、第2、第3の対応策をどう打つのか」という具合に、アクションプランを具体化できる手法である。

 その代表例であり、現場での実用に耐えうるのが「プロセス・アプローチ」だ。プロジェクトで実施すべき作業を分割・細分化して階層的に整理する「WBS(Work Breakdown structure)」に基づいて、個々の詳細作業に潜むリスクを定期的に洗い出し、リスクが発生したときに具体的な対応策を講じるプロセスを繰り返す手法である。プロセス・アプローチの具体的な作業内容を、図2に示した5つのステップに分けて解説しよう。

図2●5つのフェーズを繰り返すことでプロジェクトでのリスク発生を防ぐ「プロセス・アプローチ」の手順
特に重要なのは、ステップ3のリスクに対する具体的な対応策の計画立案である
[画像のクリックで拡大表示]
ステップ1 リスクの洗い出し

 最初に手がけるべきことは「リスクの洗い出し」である。

 まず、必要な情報や資料をリストアップして収集する。例えば、営業担当者が持っている顧客に関する情報や資料、契約書のひな形、類似プロジェクトで発生したリスクの報告、フェーズ別のチェックリストなどを活用する。

 “漏れ”をなくすため、WBSで定めた詳細作業を単位として、「この作業を実施するとき、どのようなリスクが想定できるか」を問いかけながらリスクを洗い出す。ただし、漠然とリスクを考えるのではなく、「スケジュールを遅延させるリスクは何か」、「技術面で問題になるリスクは何か」、「コスト超過の原因になるリスクは何か」、「契約面で問題になるリスクは何か」という具合に、具体的な状況を思い浮かべて洗い出すことが重要である。

 WBSを構築する際に「不確実性の高い作業」として特定したものについては、その作業を実施する上での前提や仮定の現実性を1つひとつチェックしなければならない。現実性のない前提や過程は、すべてリスクになるからだ。

3つのグループ技法を活用

 リスクの洗い出しはできるだけチームで行い、「ブレーンストーミング」や「ノミナル・グループ・テクニック(NGT)」、「クロフォード・スリップ」といった“グループ・テクニック”を効果的に使うことが重要だ。

 ブレーンストーミングでは、議事進行役はリスクを洗い出す前に、過去の事例などを紹介しないよう留意し、できるだけ幅広い、自由で創造的な発想をメンバーに求める。話し合いの初めに、メンバーの意見に対する他のメンバーの批判を抑えるのがポイントだ。メンバー間のシナジー(相乗効果)を最大限にするようにセッションを進める。

 なお、ブレーンストーミングではプロジェクトマネジャーなど職位が上位のメンバーの意向を汲んで、それに沿った発言ばかりになりがちだ。すなわち、集団思考に陥る危険性があるので注意する必要がある。

 NGTでは各メンバーに10個から20個程度のリスクをノートに記載してもらい、プロジェクトマネジャーが集計・発表し、まとめていく。シナジーは発揮されないが、単位時間当たりの“発想量”は他の手法と比べて一番多いので、緊急事態に適している。

 クロフォード・スリップでは、各メンバーに付せん紙を配ってリスクを書き出してもらい、プロジェクトマネジャーが回収して発表する。それを2回、3回と繰り返しながらリスクをまとめていく。書き出すことで思考のレベルが深まり、集団思考に陥る可能性は低い。また、匿名性が保たれるため、自己規制が取り除かれるという特徴もある。シナジーが発生するものの、ブレーンストーミングと同様か、それ以上に時間がかかる。

 このように、各技法には長所と短所がある。それらを踏まえて使い分けることが重要だ。


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智慧校园建设案旨在通过融合先进技术,如物联网、大数据、人工智能等,实现校园的智能化管理与服务。政策的推动和技术的成熟为智慧校园的发展提供了基础。该案强调了数据的重要性,提出通过数据的整合、开放和共享,构建产学研资用联动的服务体系,以促进校园的精细化治理。 智慧校园的核心建设任务包括数据标准体系和应用标准体系的建设,以及信息化安全与等级保护的实施。案提出了一站式服务大厅和移动校园的概念,通过整合校内外资源,实现资源共享平台和产教融合就业平台的建设。此外,校园大脑的构建是实现智慧校园的关键,它涉及到数据中心化、数据资产化和数据业务化,以数据驱动业务自动化和智能化。 技术应用面,案提出了物联网平台、5G网络、人工智能平台等新技术的融合应用,以打造多场景融合的智慧校园大脑。这包括智慧教室、智慧实验室、智慧图书馆、智慧党建等多领域的智能化应用,旨在提升教学、科研、管理和服务的效率和质量。 在实施层面,智慧校园建设需要统筹规划和分步实施,确保项目的可行性和有效性。案提出了主题梳理、场景梳理和数据梳理的法,以及现有技术支持和项目分级的虑,以指导智慧校园的建设。 最后,智慧校园建设的成功依赖于开放、协同和融合的组织建设。通过战略咨询、分步实施、生态建设和短板补充,可以构建符合学校特色的生态链,实现智慧校园的长远发展。
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