リスクマネジメントの考え方を知る 5

ステップ4 対応策の実行

 プロセス・アプローチの第4ステップは、状況の判断と対応策の実行である。追跡しているリスクが立ち消えになったか、逆に「トリガーポイント」に達するほど悪化したか、といった状況を的確に把握する。そして不幸にもリスクが現実のものとなり、トリガーポイントに達した時点で、対応策を実行に移す。

 プロジェクトマネジャーは対応策の実行後に有効性を追跡するとともに、その対応策自体が誘発しそうな別のリスクの出現にも気を配る必要がある。また、対応策が有効性を発揮していない場合は、なぜ効果がないのか、第2の策を打つべきなのか、といった視点で状況を監視し続けなければならない。

ステップ5 結果のDB化

 経験した失敗は、組織にとって貴重な財産となる。重大リスクはどう推移していったか、どの対応策がどんな状況で功を奏したのか、どの対応策の効果がなく、その理由は何だったのか、などを記録しておくと、後々の重要な資料となる。

 第5ステップは、これらをデータベース化することだ。想定したリスクが発生したかどうか、リスクは対応策の「緩和」によって軽減されたか悪化したか、その度合いはどの程度だったか、といったことを追跡し、その上で対応策の適切さや有効性を評価し、データベースに記録する。

 組織は自ら学習しない。データベース化した評価結果を資産化し、プロジェクト関係者に活用してもらうことは、組織にとってリスク・マネジメントを実践する上での最大の課題である。個々のメンバーが学習したものをデータベース化し、継承させてこそ、初めて組織が学習するのだ。このプロセスなくして、組織レベルでのリスク・マネジメントの定着は期待できない。

定期的な繰り返しがカギ

 プロジェクトの期間中、リスクの発生確率やインパクトが変化し、プロジェクトが進行するにつれて、重大リスクのリストが新陳代謝することはすでに述べた。重大リスクの上位10項目に対応策を講じる「トップ10ルール」を実施している米国企業では、上位10項目の順位が常に変動する。

 リスクの流動性に対応してプロセス・アプローチを有効に機能させるには、定期的にプロセスを繰り返し、各フェーズ特有のリスク群と最適な対応策を継続的に再評価し、リソースの有効活用を図ることが前提になる。どのようなリスクが抜け落ち、新たにどんなリスクが浮かび上がったのか、リスク・リストの新陳代謝に伴い対応策はどのように更新されたか、リソースの確保は十分か、トリガーポイントのズレはないか、などを継続的に評価することが求められる。

 では、どのような頻度で再評価していけばよいのだろうか。プロジェクトの特性や期間にもよるが、およそ2~3週間と考えればよい。それ以外に、重大な変化が生じた後や、重要な意思決定をする前は、新たなリスク発生の可能性を評価するべきタイミングである。

 以上、プロジェクトを破綻させないためのリスク・マネジメント手法として、チェック・リストとプロセス・アプローチを解説してきた。

 ただし、これらの手法を知識として理解するだけでは不十分だ。実践レベルに耐えうるスキルの習得やツールの活用が欠かせない。例えば、リスク管理プランやリスク評価、結果レポートのテンプレート類、ディシジョン・ツリーなどの意思決定ツール、キャッシュフロー分析のシミュレーションなどは、実際に使ってコツを会得しなければ、うまく効果を引き出せない。プロジェクトの現場でリスク・マネジメントを実践するには、本講座で解説した手法の理解に加え、これらのスキル習得やツール活用にも取り組んでいただきたい。


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